夫婦二人三脚で営む陶芸工房

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2024/07/22 11:44

翁長 良【Ryo Onaga】
おなが家成形担当

1974年生まれ。
沖縄県沖縄市出身。
幼少期を名古屋で過ごし、中学から沖縄に戻る。
琉球大学法文学部卒業 社会学専攻

ドキュメンタリー製作に興味を持ち、撮影プロダクションに就職 その後フリーランスへ転向映像カメラマンとして活動した。

結婚後、家族との時間を求め陶芸の道へ転向
(義父である陶芸家山田真萬氏へ師事)

2019年、焼物工房おなが家設立



◇インタビュー記事
(インタビューワー・コピーライター/中山理恵)

Q:マグカップの魅力を改めて教えてください。

マグカップは陶芸をやる意味でいろんな要素がつまったとても奥の深いアイテムです。技術的にも作業の労力的にも他の食器(カップや皿)とは違う手間を要します。皿などと違い直接口を付ける食器であること。カップとは違いハンドルを付ける作業があること。単純にカップ(ボディー)として制作したものにハンドルを付けると変形しやすいこと。ハンドルとボディーの重さや見た目のバランスも大切。ハンドルを付ける分重くなるので、見た目より軽く感じるような仕掛け。などなど。手間をかけて時間をかけて、様々な要素を疎かにせずに出来上がるのがマグカップ。 そうやって出来たマグカップは我が子のような愛着がある。完成までの手間や作者の想いなどが詰まっているところがマグカップの魅力。

Q:マグカップを成形する時のこだわり(大切にしていること)を教えてください。

様々な形やサイズのマグカップを制作していますが、成形する時は特に手に持った時の感触を意識しています。持ちやすいか?軽く感じるか?指を何本どう入れるか?その時どの指のどの部分に負荷がかかるか。痛くないかなど。男性、女性、子供によって手の大きさも違うのでそこも考えます。人それぞれに相応しいサイズ感とハンドルの形状があるはずだなぁと。 あとは口を付ける食器なので口当たりの感触も注意しています。口にすっと馴染むような飲みやすい形状を目指して成形しています。

Q:マグカップを成形する時の楽しさ・面白さも教えてください。

一つの作品に様々な要素を詰め込んでいく感じが楽しくて面白くて難しいところです。

Q:良さんの経歴を簡単に教えてください。

沖縄生まれですが、幼少期は名古屋で過ごしました。 中学から沖縄に戻ってずっと沖縄にいます。沖縄を地元とも移住地とも思う自分がいてアイデンティティの葛藤を抱えていた青春時代。 地元の大学でアイデンティティについて知りたくて関連文献にあたりました。 学んだことを自分なりに解釈して文書としてまとめるのが好きになり、卒業後は物書きになりたかった。 ですが、卒業間際に観たドキュメンタリー映画に衝撃を受けて映像表現の可能性に魅せられました。 その後、地元の撮影プロダクションで6年間修行の後、フリーランスの映像カメラマンとして9年間活動しました。テレビ番組を中心に沖縄県内の様々な場所で人や自然、文化を撮影しました。 カメラマンとしてとても充実していましたが、結婚を機に価値観が変わっていきました。 当時は出張も多く二、三日家に帰らないのは当たり前。家事育児は妻に任せっきりの生活でした。子育てをしたいという強い希望があったのでカメラマンを続けて行くことにだんだんと違和感を感じていました。 二人目の子ができたのを期に転職を決意。 焼き物なら子育てをしながら家族と共に生きていけると思いました。 結婚当初から誘われていたこともあり、陶芸家の義父に師事しました。3年間の修行の後、妻と二人で独立開業しました。

Q:その経歴の中で、現在のマグカップ作りに活きているかも、と感じることがあれば教えてください。

カメラマンの仕事は技術をベースにして表現活動をするというもので、焼き物と似ているところがあります。技術を高めていけば出来ることが増えて、仕事の幅が広がっていきます。それは焼き物でも同じで、技術が身につくにつれて色んなものが作れるようになります。ただ技術は一定程度時間をかければ身につきますが、それを使って何を表現するかはその先にあることだと思います。普段何を見て何を感じで過ごしてきたかなど、その人の人となりが表現に現れると思います。カメラマンなら撮影する画に、陶芸家なら器に現れると。ですので、普段の暮らしも技術を高めていくことも疎かにしないようにしたいです。

Q:美和子さんの絵付で「おなが家のマグカップ」が完成すると思いますが、そのことに対してどんな思いがありますか? あれば教えてください。

彼女の絵付けなくしておなが家の器は完成しないと思っています。私は美和子の絵や美意識をとても信頼していて、彼女の生み出す絵には独自の哲学があってとても価値が高いと思っています。全てに沖縄をベースにした物語があって、出てきた絵は物語の一場面になっています。そこにはたすけ合う心やひたむきな努力、そして何があっても明るく生きる沖縄の心が描かれています。眺めていると物語の世界に入り込んで、特別な時間が過ごせます。 私は美和子の絵付けがあるので安心して成形に集中することができます。お互いの得意なことを合わせておなが家の器が完成すると思っています。

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